Vol.12 小さくて暖かい木の家（ルーマニア?マラムレシュ地方）

伝統(tǒng)的な住まい

モミの木はやわらかいため加工しやすいのですが、そのぶん強度は低く、高い建物には向きません。そのため一般的な住宅は平屋建てで、一列にならんだ３部屋で構(gòu)成されています。入口の左手に居間、右手にもう1部屋、真ん中の空間は手前が入り口につづくホールとなっており、奧は物置や貯蔵室に使います。また物置の部屋には屋根裏に上がるハシゴを設(shè)けます。屋根裏にストーブの煙を?qū)Гい啤ⅳ笱u用の空間にすることもあり、煙が充満することによる防蟲の効果もあります。屋根には煙出しがあり、そこから煙が屋外に出ていきます。家の外には井戸のほかに家畜小屋やトイレ、果樹園や家庭菜園があります。

家族が集まる多機能な空間

居間と屋根裏の空間

家族の居住空間は、ほとんど居間に集約されています。居間の入り口近くの壁には、「ソバ」と呼ばれる、暖房と調(diào)理器具の機能を兼ねたストーブがあり、レンガや陶器でできています。燃料の炎で直接部屋を暖めるわけではなく、熱せられたレンガや陶器が熱を保ち、その熱が木の壁を暖めることで部屋中もじんわりと暖まります。このストーブの熱で煮炊きを行うことができるので、居間には臺所の機能が備わっており、食事もこの空間でとります。

さらに、この部屋は寢室も兼ねています。この蓄熱性のあるストーブの壁が、炎を消しても夜どおし部屋を暖めてくれるので、ストーブのある部屋に家族みんなが集まり、一緒に眠るのです。部屋が複數(shù)ある家でも生活に使用している部屋は居間だけの場合が多く、もう1室ある場合は、おもに夫婦だけの寢室として使われるほか、さらに部屋を作る余裕がある場合には客人に見せたり泊めるときに使われたり、娘の嫁入り道具を保管するために使われています。嫁入りの道具はクッションや刺しゅうの入った布などで、娘が小さい時からお母さんが冬の間に織るのです。客人も普段は居間に通されることが多く、居間の壁に據(jù)え付けられたベンチに座ってツイカ（蒸留酒）を飲みながら語らいます。

マラムレシュの家は、このストーブを中心とした空間に、居間?臺所?食卓?寢室?客間の全ての機能が備わっているのです。衣類を入れる長持ちも、食器棚もベッドも同じ部屋にあります。コンパクトな家屋のそれほど広くない空間に、夜通し暖かいストーブの壁から伝わる熱、そして保溫性のある木材を家の素材として用いて、長い冬を暖かく過ごすことがマラムレシュ地方の暮らしの特徴です。一方、夏は戸外に調(diào)理用ストーブなど加熱場所を作り、家の中に熱がこもらない工夫をしています。

資源をムダなく使う生活

そして、動物たちとの共存も欠かせません。大切に育てた家畜が貴重な食料になるだけではなく、屋外のトイレと家畜小屋から出た排せつ物はまとめて発酵させ、家庭菜園や少し離れたところにある畑で、野菜や果樹の有機肥料となるのです。

マラムレシュには豊かな森林と狹い土地を利用した有畜農(nóng)業(yè)にもとづいた生活があり、その限られた資源や生業(yè)の中で何代にもわたって暮らしてきました。子どもたちは學(xué)校から帰ると、家族の仕事の手伝いや農(nóng)作業(yè)をこなします。家の中では居間に集まり、そこでも一日中家族と一緒に過ごします。そのように人びとが親密に過ごし、ともに働く生活が、村の伝統(tǒng)を受け継ぐための重要な役割を果たしてきたといえます。