「カーボンニュートラルに挑む」

2023年夏、華やかなライトを浴びて、屋鋪は壇上に立っていた。大和ハウス工業(yè)の社內(nèi)表彰制度「Daiwa House Award」で受賞者の一人に選ばれたのだ。

受賞理由は「オフサイトPPAのスキームをつくり上げ、事業(yè)化したこと」。

屋鋪は喜びと同時に、戸惑いも感じていた?！袱长纬晒Δ?、私ひとりの力じゃない」。本部や事業(yè)所にいる営業(yè)擔當者、技術擔當者、みんなの連攜があってこそ訪れた瞬間だと知っていた。そして振り返れば、世の中で環(huán)境エネルギーが注目されていない時代から、黙々と取り組んできた先輩たちの姿があった。原點には、創(chuàng)業(yè)者?石橋信夫の「21世紀は”風と太陽と水”に挑戦する」という想いがあった。先人が切り拓いた道があったから、今日この日を迎えられたのだ。

では、PPA事業(yè)化にどうたどり著いたのか、再生可能エネルギー（以下「再エネ」）先進國のドイツと、後を追いかける日本を比べながら歴史を追ってみよう。

ドイツでは1991年に「FIT」がスタート。これは、発電した再エネ電力を“電力會社”に買い取るように義務付けた制度である。2009年には「FIP」を?qū)?。電力を“需要家や市場”に直接販売でき、売電価格に対して一定のプレミアム（補助額）が上乗せされた。

日本では、東日本大震災の翌年2012年に、ようやく「FIT」制度が開始。その10年後の2022年、「FIP」が導入された。

さて、大和ハウスグループは？というと、先進國に追隨すべく、早くから動きを活発化させていた。大和ハウス工業(yè)は、2009年に環(huán)境エネルギー事業(yè)部を設立。グループ一體で事業(yè)化や商品化を進め、電気の使用量を減らせる蛍光燈反射板、蓄電システム、太陽光発電所「DREAM Solar（ドリームソーラー）」、風力発電所「DREAM Wind（ドリームウィンド）」の開発へと手を広げていった。

屋鋪が入社した2013年は、再エネ事業(yè)のエンジンを加速し始めた時期にあたる。屋鋪の前職は、太陽電池セル?モジュールの研究開発だ。當時、日本メーカーは海外企業(yè)に押され、厳しい狀況に陥っていた。それならば、開発を離れ、世の中に太陽光発電を広める現(xiàn)場でチャレンジしたい。そう考えた屋鋪は、大和ハウス工業(yè)に活躍の場を求める。

入社後はメガソーラーの提案に攜わり、発電事業(yè)「IPP」のスキームもゼロからつくり上げた。太陽光発電設備をリースするスキームの構築、業(yè)務ルールの策定、契約書の整備。社內(nèi)に経験者はおらず、リース會社や社內(nèi)管理部門の助けを借りて軌道に乗せた。

その間も時代の流れは止まらない。FITの買取価格が下がり、FIT終焉の兆しが見えてきたのだ。FITを活用して発電事業(yè)を拡大していた大和ハウス工業(yè)は、売上の大きな柱を失うことになる。脫FITが喫緊の課題となり、浮上したのが「PPA」だった。

大和ハウス工業(yè)の最大の特徴は、圧倒的な開発力と「オフサイトPPA」の全てをトータルコーディネートできる點にある。広い土地を探し、土地オーナー様と交渉して賃貸契約を結ぶ。そこにメガソーラー発電所を建てる。発電して電気を送り出す。その先にいる小売電気事業(yè)者のアサインや需要家のセッティングまで、全て自社で行える。

土地探しの立役者は、全國にいる環(huán)境エネルギー事業(yè)の営業(yè)擔當者だ。大規(guī)模開発が可能な適地が減る中、地域を知り盡くす土地情報力を駆使して、候補地を次々に探し出す。

発電所を建てる施工品質(zhì)の高さには、もとより自信がある。

小売電気事業(yè)者との交渉は屋鋪の擔當。1年半かけて全國の大手電力會社やガス會社等との協(xié)業(yè)體制を築いた。また、需要家を見つける前から発電所をつくる準備を進め、小売電気事業(yè)者に対し、約2年で700MWを超える接続検討（送配電網(wǎng)への接続可否確認）を行った。その実績が評価され、今では協(xié)業(yè)パートナーとして認められている。さらに第7次中期経営計畫では毎年、數(shù)百MWずつ接続検討を行い、発電電力量の累計を飛躍的に伸ばす野心的な目標も立てている。

企業(yè)の再エネニーズも高まってきた。カーボンニュートラルやRE100の達成を目指す需要家を開拓し、2024年現(xiàn)在、數(shù)十社にまで増加した。

オフサイトPPA事業(yè)は、電力を「いつ」「どこに」「いくらで」売るかを描く出口戦略が鍵になる。どこの需要家が、いつ電力を必要としているか。どこの小売電気事業(yè)者を介して屆けるか。発電所が東京にあっても、交渉先は発電所のあるエリアの大手電力、大手ガス會社とは限らない?，F(xiàn)時點で最も必要とされているのはエリア外の大手電力やガス會社等かもしれない。屋鋪の部署には、各エリアの大手電力會社ごとに擔當者がおり、部署全體で密に情報を共有している。この組織體制が、小売電気事業(yè)者と需要家のベストマッチングを可能にしている。出口合意できる機會を逸しないためには、チームワークが非常に重要だった。

チームメンバーの仲はすこぶる良い。環(huán)境エネルギー事業(yè)の將來性を見込み、自ら希望して配屬された若手メンバーが多く、その姿勢は、かつてキャリア採用で新天地に飛び込んだ屋鋪とも重なり合う。屋鋪は「新規(guī)事業(yè)の立ち上げ期には、彼ら彼女らのように前向きに努力して、日々さまざまな経験を吸収し、成長しようとする人たちが必要だ」と大いに頼りにする。

ここで、需要家様と小売電気事業(yè)者様の目線から、大和ハウス工業(yè)を見ていきたい。

需要家は株式會社ニチレイ様。加工食品事業(yè)や水産事業(yè)などを展開されている。小売電気事業(yè)者の中部電力ミライズ株式會社様は、中部電力グループの販売事業(yè)會社として電気?ガスの小売サービスなどを提供されている。

ニチレイの吉田様に、當社のオフサイトPPAを?qū)毪筏坷碛嗓颏劋筏?。「ニチレイグループでは、2050年のカーボンニュートラル実現(xiàn)を目指し、それに先駆ける2030年度には2015年度比でCO2排出量を50％削減する目標を掲げています。その一環(huán)として再エネの調(diào)達を検討している時に、大和ハウス工業(yè)からご提案を受けました。他社にも相談しましたが、當時はほとんどの會社がまだ手探り狀態(tài)で、長期の準備期間を要すると言われました。ところが大和ハウス工業(yè)から提示された期間は、他社の半分。私たちが求めるスピード感に寄り添っていただけたのが決め手になりました。その後も當社の要望や動きを酌み、私たちと一緒に歩きながら取り組んでくださる姿勢に大きな信頼を寄せています」。

ご提案した発電所は、三重県津市（約1.3MW）と香川県三豊市（約1.1MW）の2カ所。ご提案後すぐに中部?四國エリアの大手電力グループ様と協(xié)議し、スピーディーに合意に至った。三重で約790t、香川で約600tのCO2排出量を削減する。

中部電力ミライズ様にとって、大和ハウス工業(yè)はオフサイトPPAの協(xié)業(yè)パートナー第1號になる。宮部様、小林様は「発電事業(yè)者の企業(yè)に信頼性がないと、われわれから需要家様に自信を持ってお勧めできません。大和ハウス工業(yè)はFITで培ったノウハウと実績が豊富で、設計?施工を安心してお任せでき、お客様を現(xiàn)地へ案內(nèi)するアテンドにも同行してくれて心強い。また、発電所側(cè)でトラブルが起こると、需要家側(cè)の信用や企業(yè)価値が下がるリスクが発生しますが、大和ハウス工業(yè)は法令遵守が厳格。そこも安心感につながっています」とご評価。さらに中部電力グループ様の一員として、発電事業(yè)者の目線で見る當社の強みについてもお伺いした。宮部様は「発電所をつくる土地を探して、折衝し、建設できるところですね。われわれグループにはない部分を得意とされ、協(xié)業(yè)パートナーとして大変ありがたい」とおっしゃってくださった。

現(xiàn)在、PPA事業(yè)を推進する実務の擔い手はごく少數(shù)に過ぎず、環(huán)境エネルギー事業(yè)部內(nèi)でも會社全體でも、PPAの將來性を自分ごとと捉える社員は多くはない。しかし「先の先」を読んだからこそ、今のチャンスが訪れた。事業(yè)部を率いるトップは「オフサイト発電所といえば大和ハウス」といわれる未來を目指すと宣言した。その先には「再エネ業(yè)界のTOPプレイヤー」になるという大きな目標がある。

屋鋪は、幼い頃に見たロボットのアニメを思い出す。未來の世界では、全てのエネルギーが太陽光発電で賄われていた。それを見た時の憧れが、屋鋪をここまで連れてきた。あの頃の自分に「君のやりたいことが、できているよ」と教えたい?！袱扦?、まだ夢をかなえる途中なんだ」と伝えたい。再エネ業(yè)界のTOPプレイヤーになれる可能性は十分ある。夢に手が屆く場所に、私たちは今、立っている。