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連載:みんなの未來マップ
2025.3.31
入山さんのロングインタビューはこちら
「なぜ多様性が必要なのか」に経営學者?入山章栄さんが答える。いま、企業がダイバーシティを推進すべき理由
詳細を見る経営學者として、企業の成長に関する最新理論のリサーチ?分析などの研究活動を行い、企業における「ダイバーシティ(多様性)」の必要性について數多く言及してきた、早稲田大學大學院経営管理研究科 早稲田大學ビジネススクール教授の入山章栄さん。日本企業の未來について、多様性の観點からどうなっていくのかを伺いました。
入山さんが思うサステナブルな企業とは、どのような企業ですか。
この地球を持続可能にしていく企業ですね。僕は「我々は地球を借りて生きている」とよく言うんです。人類は地球の歴史46億年のうち、まだ700萬年しか存在していないし、定住したのはたかだか1萬年前のことです。つまり超新參者が、地球をお借りして生きている。ということは、もっと良くしなくちゃいけないし、使い切ったと思ったら返さないといけない。ただ、それを続けるには、企業自體もサステナブルでないといけません。なので、ちゃんと儲けることも大切だと思います。
そのためにはイノベーションが必要だということですね。
そのとおりです。これからの時代、イノベーションを起こせない企業は潰れます。だから、長期経営をやりながら、多様性をコツコツ高めていく必要があります。名ばかりダイバーシティをやっていてもイノベーションは起こせないし、そんな組織は息苦しくて、人が辭めていってしまいます。
日本の企業は同質性が高く、思ったようにダイバーシティが進まないところがあります。どうすればサステナブルな経営のために、多様性を高めていけるのでしょうか。
日本の場合、放っておいても多様性がどんどん求められるようになっていきます。なぜかというと、人手不足だからです。東京一極集中は、まだ止まっていません。特に女性は田舎の暮らしに息苦しさを感じて、都會に出てしまう傾向があります。ただ、人口減少と流出が続いているからこそ、多様性はむしろ地方のほうがかなり進んでいるという逆転現象が起きています。
地方では女性も高齢者も外國人も、普通に戦力です。しかも生産性が悪いことをやっている余裕もないから、誰でも現場に行くのが當たり前で、中間層の人間があまりいません。これからAIに駆逐されるのは、間違いなく東京の大企業に多い中間層のホワイトカラーの人間です。そう考えると、今や多様性が一番遅れているのは、東京の大企業かもしれません。大企業も、最初はただのベンチャーだったはず。その時の思想に戻るといいと思います。
おそらくこの先、人類の壽命はさらに伸びます。なぜかというと、AIが出てきたからです。2024年のノーベル化學賞の受賞者は3名、うち2名がグーグルのグループ會社でAIを開発している「Deep Mind」のCEOと研究者でした。同社の開発した「アルファフォールド」というAIは、タンパク質の3次構造を全部解析できるので、數十年の間にガンという病気はおそらく、なくなるといわれています。すると、いよいよ人類の壽命は120?130年ぐらいになる可能性がある。そうなると、僕らはどんどん「暇」になるんですね。逆に、それをどうやって楽しんでいくかが大事な社會になっていく。今、推し活が流行っているのもその一環なのかもしれません。
入山さんは暇になったら何がしたいですか。
暇じゃなくてもしていますけど、旅行が好きなんで、旅行がしたいですね。ここで最初の話に戻ると、人類が定住したのはたかだか1萬年で、699萬年は旅をしていたんです。だから人類は、本質的には旅をする生き物なんです。
何年か前にNHK出版から『格差の起源』という本が出ました。著者はオデッド?ガローというブラウン大學の経済學教授で、統一成長理論の提唱者です。世界中の研究を網羅した彼の結論は、國の成長に重要なのは多様性だということでした。ヨーロッパで産業革命が起きたのは、當時のヨーロッパがもっとも多様性が高かったからだと指摘しています。
なぜ高かったのでしょうか。
ホモサピエンスは20萬年前に東アフリカで生まれて、だんだん移動していきました。最初は北上してヨーロッパへ行き、そこから右に曲がってユーラシア大陸を橫斷。ベーリング海峽を渡ってアメリカ大陸へ行き、最後は南米に辿り著いた。ホモサピエンスにも種族がいろいろいて、それが移動の途中でどんどん定住していったらしいんです。だから南米の端っこに著いた時にはもうほとんどの種族が殘っていなかった。つまり、一番多様性が高いのは、東アフリカを出たばかりのヨーロッパなんです。
ヨーロッパはホモサピエンスという種族の中で多様性が高かったことが産業革命につながっているというのがオデッド?ガローの結論です。人類の移動の段階から、多様性がキーワードになっていました。もしかしたら、人の進化にも多様性が大きく関與しているのかもしれないのです。
慶應義塾大學卒業、同大學院経済學研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大學経営大學院よりPh.D.(博士號)取得。同年より米ニューヨーク州立大學バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大學大學院 早稲田大學ビジネススクール準教授。 2019年より教授。専門は経営學。國際的な主要経営學術誌に論文を多數発表。メディアでも活発な情報発信を行っている。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
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