4期市長を勤めた名士のお家柄。
故郷のお役に…と、殘された土地を高齢者マンション併設の多機能施設に活用。
もう一點、高瀬さんがとくに注文したのは外観の色彩です。「鳥の〈トキ〉の朱色」。淡い朱色の外観は界隈でもひときわ目を引いていますが、「ときの郷」の〈とき〉には、西脇の135度の標準時の町という意味も込めているようです。
また、高瀬さんは介護施設の運営をはじめるにあたり、一人のスタッフを1年半という期間、給與を自費で賄いながら介護施設に研修に派遣し勉強と経験を積ませたそうです。その経験から學んだ知識や経験も建物の設計に盛り込むようにしたそうです。
また、敷地內には多目的の集會所があります。これはグループホームの入所者を訪ねられた家族や知人の方々の宿泊に利用したり、あるいはまた近隣地域のみなさん方に「なにか有益に使っていただけたら」との考えで設けられた「地域交流スペース」です。
ところで、取材におうかがいした日は開所の前日で、廚房ではオープンを控えてスタッフが最後のトレーニングと作業の確認に慌ただしく働いておられました。介護スタッフの方々も職場の責任者の指示に従って、いろいろ細かな打ちあわせを行っておられる最中。そして、見學者の方々が後を斷たず、次から次へとオープン前の「ときの郷」を訪れていました。
一つの同じ敷地內に、高齢者の安心の住まいがあり、リハビリや入浴ができて楽しい交流ができるデイサービスがあり、介護スタッフによって十分なケアのもとで生活できるグループホームがある…というこのエリアは、さしずめ西脇市の新しい高齢者のコミュニティーゾーンの出現といっていいかもしれません。「母もマンションに住まわせようと思っています。専門のスタッフがいるので安心ですから。そして…いずれは、私も生まれ故郷に戻って來ようか、と」。もしそうなれば、醫療と介護のちょっとしたインテグレーション(統合)です。実際、醫師が経営する介護施設というイメージは「安心感」という點で地元の人々の間でもすこぶる評判になっているようです。
最後に高瀬さんは、「とにかく地域社會のお役に立てれば…」。やはり溫厚な笑みとおだやかな口調でした。
CASE3
「ときの郷」と「メゾン セントレ」