緻密な手仕事で絶やさぬ、江戸小紋の美

福島県の中部にあたる、福島県中通り。須賀川市で、100年以上にわたり『江戸小紋』を染めている工房があります。『江戸小紋』は柄が非常に小さく、一見無地のように見える技法のことで、広く普及したのは江戸時(shí)代初期。武士の禮裝である裃(かみしも)が由來といわれています。參勤交代で江戸に集まる武士たちは自分の藩を示す「定め柄」を裃に用いていましたが、幕府の令によって派手な裃を禁止されたことから、武士たちは競(jìng)い合うように微細(xì)な柄を求めるようになり、江戸小紋の技法が確立していきました。?鮫の皮のような半円形を重ねた『鮫小紋』、點(diǎn)の縦橫が直角に交差し、等間隔に並べられた『通し小紋』、點(diǎn)の並びが斜めに交差してある『行儀小紋』の柄は、『江戸小紋三役』といわれる代表的な柄。柄や色の合わせ方次第で、シーンを選ばず著回すことができるため、改まった行事にも、街著にも使える著物として根強(qiáng)い人気を誇ります。

伝承約100年、須賀川市唯一の手染め工房

現(xiàn)在、江戸小紋を手掛ける工房のほとんどが機(jī)械染めで、しかも分業(yè)制で行われていますが、『形幸(かたこう)』は、創(chuàng)業(yè)以來手染めを守り、仕上げの『干し』まで一貫して行う、須賀川市唯一の工房です。「(手染め、一貫作業(yè)という)どこもしていないことをしてきたから、今も続けられているんだと思います」そう語るのは、形幸三代目の染師、渡辺幸典さんと、息子で四代目の泰幸さんです。
江戸小紋の染めには、柿渋を塗り貼り合わせた和紙に細(xì)かい柄が彫られた『伊勢(shì)型紙』が使われます。
白い絹地に型紙をのせ、白地を生かすところに無地の糊を塗り、その上から版畫のように、色のついた糊を重ねて柄をつけます。『型付け』といわれるこの工程の後は、型紙の上に色糊をのせ、均等な力で生地全體に塗り付ける『染め』の作業(yè)です。一反およそ13mの生地に、型紙は約30～40cm。少しずつ型付けしては型紙をはずし、模様の継ぎ目に合わせて、再び型紙をのせ、糊を塗る。まるで一度に染めたかのように柄が途切れることなく仕上げるのが、染師の腕の見せどころ。柄の継ぎ目を直すのも、糊をつけた細(xì)い針で生地に點(diǎn)をつけながら、微調(diào)整していきます。緊張感が続く作業(yè)を繰り返した後、生地に色を定著させる『蒸し』、『水洗い』、『外干し』と作業(yè)が続き、一枚の小紋が完成します。

(寫真左上／右上)鮫小紋などを彫った伊勢(shì)型紙。數(shù)百枚ある型紙から染める柄を選ぶのも、染師の感性が問われるという　(寫真左下／右下)複數(shù)の色を染めた他にない小紋

『どこもしていないこと』をする

形幸の江戸小紋は、須賀川市のお店と、形幸の技に信頼を寄せ、80年以上取引がある東京の呉服問屋でしかお目にかかれません。TVや雑誌に登場(chǎng)する江戸小紋に形幸の名前は出てきませんが、その緻密さと美しさから、形幸さんにたどり著く著物通の方もいるとか。「柄が緻密すぎるので、(作業(yè)工程を見られるまで)手作業(yè)だと信じてもらえないんです」と苦笑いを浮かべる渡辺さん親子。それでも、型紙の文様をもっと細(xì)かく見えるように、今も試行錯(cuò)誤を続けているといいます。

『どこもしていないこと』をする。形幸の精神は、違う形でも続いています。江戸小紋は通常、単色で染めるものですが、複數(shù)色を重ねる小紋をつくっているのも、渡辺さんと兄弟弟子のみ。一反にも及ぶ生地に、1ミリ以下の點(diǎn)描を、しかも何度も色を重ねる…。呼吸を忘れるような工程が続きますが、手仕事を続ける渡辺さんたちにしか生み出せない貴重な小紋が仕上がります。他にも、金糸などで織った壽光織(じゅこうおり)に江戸小紋を染めたり、反物の裏表に染めを行ったりと、今も新たな挑戦が続いています。
四代目の泰幸さんも、同じ福島の伝統(tǒng)工蕓品『會(huì)津木綿』の職人とコラボレーションし、會(huì)津木綿ストールの染めを行ったり、沖縄で紅型(びんがた)の染師と交流を図ったりと、全國(guó)の若手職人とのつながりを積極的に行っています。渡辺さんたちが受け継ぐ『どこもしていないこと』をする精神、そして柔軟に新しいことに挑戦する気持ちが、江戸小紋だけでなく、日本の伝統(tǒng)文化の継承につながっていきます。